幻の木「榧」
榧の実
榧の実はオリーブに似た緑色の実で、果肉の中に殻を被った種子が入っています。この種子の部分が可食部で、昔から食用や薬用に使われており、子供たちは榧の実をおやつにしていました。栄養価が高く、健康や美容によいといわれるビタミンEが豊富。リノール酸、オレイン酸、シアドン酸など9種の脂肪酸を含み、なかでも中性脂肪の増加を抑制したり、コレステロールを下げたりする働きがある「シアドン酸」が約10%(榧油を分析)含まれているのが特徴です。
榧の実の収穫
榧の実は2年間たっぷりと太陽の恵みを浴びて育ちます。大きくなった実を収穫していると、来年に向けて育つ実の赤ちゃんが見られます。収穫期は9月初旬~10月で、自然に落下したものを拾い集めます。落下した実は時間とともに鮮度が落ちるため、私たちは毎朝山に通い、できるだけきれいな状態で持ち帰れるようにしています。持ち帰った榧の実は一つひとつ手で剝き、緑色の果肉と種子に分けて保存します。
榧の実の歴史
古くは縄文時代より食べられていたとの記録が残されています。榧が日本各地に広がったのは弘法大師によるもので、平安時代、実は凶作に備える保存食料に、また実から搾った油は生計の糧とするようにと伝え広められたそうです。四国八十八ヶ所霊場第六十七番札所、香川県の大興寺の参道脇にある榧は大師お手植えと伝えられており、樹齢は1200年にもなります。
榧の実の使いみち
榧の実の種子は炒って食べるほか、飴や砂糖掛けのお菓子、お腹の虫くだしや漢方などに使われています。また、種子から搾った油は食用のほか、燈火用、理髪用などに用いられていました。榧油は明治時代の「大日本有用樹木効用編」や大正時代の「大植物図鑑」には「本邦植物質ノ油中最上ノ者ナリ」と記されており、かつては「日本最高級の植物油」として高く評価されていたようです。
緑色の果肉は爽やかな柑橘系の香りがし、焼酎の香りづけや最近ではクラフトビールにも使われています。また、当店では世界で初めて榧の果肉の香りを製品化し、精油や香水を作りました。
榧の実の食べ方
- 果肉を取り除いた殻付きの種子を1週間ほど灰汁に浸けてアク抜きをします
- 取り出した種子をよく洗い、3日ほど陰干しをして乾燥させます
- 殻ごと弱火でゆっくりと炒ります。炒り具合はお好みで
- 殻をむいて薄皮をはぐ、または薄皮ごと食べることもできます