幻の木「榧」
榧の木
榧とは?
榧はイチイ科カヤ属の常緑針葉樹で、高さ25m、直径2m程度にまで育ち、寿命は1000年にも及びます。中国に4種、アメリカに2種、日本に1種と、世界には7種の榧があり、日本では、岩手県、山形県以南の本州、四国、九州の山野に分布しています。
碁盤・将棋盤の最高級品として最もよく知られており、高価なものでは数百万~一千万円以上するものもあります。榧の木の成長は極めて遅く、30cm伸びるのに3~4年、碁盤づくりに適した直径1.1mほどの大きさになるには300年以上の歳月を必要とします。
榧の歴史
日本の榧は縄文時代には存在していたといわれ、榧の実が食べられていたそうです。日本各地に広がったのは平安時代、実を凶作に備える保存食料に、また実から搾った油を生計の糧とするようにと、弘法大師によって広められたと言い伝えられています。
榧の実は、アクを抜いたものを炒って食べたり、飴や砂糖掛けのお菓子などが作られていたほか、お腹の虫くだしや漢方としても。また、実から搾った油は食用、燈火用、理髪用などに用いられていました。榧油は今では大変珍しいものですが、明治時代の「大日本有用樹木効用編」や大正時代の「大植物図鑑」には「本邦植物質ノ油中最上ノ者ナリ」と記されており、かつては「日本最高級の植物油」として高く評価し、愛されていたようです。
榧材で最もよく知られている用途は碁盤・将棋盤で、最高級品とされています。その他には加工のしやすさや美しさから仏像などの彫刻に用いられてきました。また、水に強く腐りにくいことから建築材や風呂桶、船舶などにも使われていましたが、榧材の生産量が極めて少ないため、そのような用途で使われることはなくなりました。
榧の魅力
きめが細かく美しい木肌
榧は非常にゆっくりと育つ木のため、木目の間隔が狭く身がよく締まっており、木肌は大変きめが細かくなめらかな質感です。色ツヤがよく、木目がきれいに映え、品のある自然の美しさや心地よさが感じられます。
時間とともに味わいを増す色ツヤ
油分が豊富で色ツヤを失うことがなく、使い込むにつれ飴色へと変化していきます。ただ古びていくのではなく、時間とともに味わいや深みが増していく良さがあります。
極めて優れた耐久性
「槇万年、榧限りなし」とのいわれがあるように、極めて優れた耐久性があります。水に強く腐りにくいことから、むかしは家の土台や風呂桶、船の材料などに使用されていました。
心癒されるような芳香
榧材は「シナモンのような香りがして癒されます」とのご感想をいただくように、特有の上品な香りがほのかに漂います。また、榧の実からはゆずやレモンのような柑橘系の爽やかな香りがします。
榧の利用
碁盤・将棋盤
本榧の碁盤・将棋盤といえば、囲碁や将棋をされる方にとっては憧れの存在。打ち味や美しさなど、どれをとっても榧に勝るものはないといわれ、古くから最高級品として愛好家に珍重されています。
まな板
榧はまな板としても最高級。適度な弾力性を持ち、刃当たりがとてもよくプロの料理人も認める抜群の使い心地です。また水切れがよく、天然の抗菌性にも優れます。
お箸
木肌の美しさもさることながら、使い心地がよく、その「軽さ」に驚かれます。榧の寿命は1,000年にも及ぶことから、長寿箸としてご贈答に喜ばれています。
ナッツ
榧の実の中にある種子を独自の製法で美味しくローストした、おやつ感覚で食べられるナッツ。カリッと香ばしく爽やかな風味で栄養豊富です。
食用油
軽い甘みと森林を感じるような味わいの食用油です。ビタミンEが豊富なうえ、中性脂肪やコレステロールを下げる働きが証明されているシアドン酸という珍しい成分を含んでいます。
精油・香水
日本人になじみの深いゆずとレモンをあわせたような爽やかな柑橘系の香り。リラックス効果のあるリモネンやピネンといった芳香成分を多く含み、森林浴効果があります。
幻の木「榧」
かつては日本の山々に自生し、お寺や農家の庭先などの身近なところにもあった榧ですが、明治以降に伐採が進んだため激減しました。日本の榧は絶滅に近い状態にあり、市場に出ることは年間に数えるほどで、新しく原木を仕入れることでさえ非常に困難な幻の木となっています。立派な成木になるには300年もかかり、生育が困難で非常に大変な労力やコストがかかるため植林もほぼされておらず、このままではそう遠くない将来、榧の木はなくなってしまうかもしれません。
榧の森づくりのはじまり~いま
榧の森づくりは、元々は碁盤をつくるための榧を育てたかったのがはじまりでした。弊社会長の前川穎司は、大の囲碁好き。大好きすぎて自分で碁盤までつくってしまうほどでした。そんななか、「切ってしまったら次は300年先か…」と思うようになり、本業が種屋ということもあり、榧の苗を育て、山に植えるようになりました。それから30年、ますます榧に惚れこんでいき、「このすばらしい榧を未来に残したい」という思いで、今では植樹も30万本以上になりました。
榧の森づくり
300年先、榧の森を夢みて
現在、榧材は深刻な材料不足に陥っています。明治以降、榧の木は伐採が進み、囲碁・将棋が普及すると本榧盤の需要が急増。それに伴って大きな榧の木が激減し、樹齢の若い小径木までもが伐採されました。しかし、植林はほとんどされておらず、新しい木が育たないため絶滅に近い状態に。木材市場に榧が入荷することもほとんどなくなってしまいました。そのことを知った当社会長は、日本の榧をなくしたくないという想いで、30年以上前から植林を始めました。
榧に惚れこみ40年、森づくりに注ぐ情熱
榧の森づくりのはじまり
榧への取り組みは、お父ちゃん(会長 前川穎司)の囲碁好きが高じて40数年前より碁盤を集め始めたことがきっかけです。榧は、碁盤・将棋盤の最高級品で、色あいのよいきめ細かな木肌に緻密で美しい木目、打ち味や香りも素晴らしく、その魅力にすっかり引き込まれました。それからは、国内外から榧材を買い集めて碁盤をつくるようになり、早朝から深夜まで碁盤づくりに没頭することもありました。そんな中、日本の榧が絶滅に近い状態であることを知り、「このままでは榧がなくなってしまう。碁盤をつくる榧の木を育てたい」と思うようになりました。
種から研究を重ね、30万本以上植樹
種から苗木を育てる研究を重ね、榧の育ちやすい涼しい場所を探し、人の手がかけられなくなった荒れた土地を一から整備し、四国の山々に約30万本以上(※2016年時点)の榧を植えてきました。
しかし、山に残っているのは3割ほど。除草しないと草に負けてしまう、夏の暑さにも弱く、若木はシカやイノシシやウサギが食べてしまう・・・。そして、一人前の立派な榧の木になるには300年と生長が遅く、大変な労力と時間がかかります。
「だからこそ、榧がかわいくて仕方がありません。」
一生懸命育てた榧の木が、300年先に榧の森になると思うと幸せなのです。
「もう日本の榧は大丈夫やき。そればあの本数は植えた」
榧の危機を知り、植林を始め、毎日山に通っていたお父ちゃんも、「もう日本の榧は大丈夫やき。大丈夫という事は、もう絶滅することはないわい。そればあの本数は植えた。」と、笑いながら話してくれます。一人前の榧に育つのは300年も先のことですが、立派な榧の森に育つことを夢みています。
榧の実の活用
古くから利用されてきた榧の実の油
古来、榧の実から搾った油は利用されており、食用油のほか、頭髪油や灯火用油として用いられてきました。江戸時代に徳川家康が食した天ぷらは榧油で揚げられたもので、大正時代の「大植物図鑑」には「日本最上級の植物油」と記されています。
良質な植物油、爽やかな香りの精油に
当社では、植林した榧からとれた実を使い、食用油や盤のお手入れに使う榧オイルのほか、世界で初めて榧の実の緑の果肉から抽出した精油や香水をつくりました。今はまだ榧の実も少なく生産量も限られていますが、榧の木の成長とともに量も増え、将来はもっとお客さまに喜んでいただける活用をしていきたいと考えています。
榧の実
榧の実はオリーブに似た緑色の実で、果肉の中に殻を被った種子が入っています。この種子の部分が可食部で、昔から食用や薬用に使われており、子供たちは榧の実をおやつにしていました。栄養価が高く、健康や美容によいといわれるビタミンEが豊富。リノール酸、オレイン酸、シアドン酸など9種の脂肪酸を含み、なかでも中性脂肪の増加を抑制したり、コレステロールを下げたりする働きがある「シアドン酸」が約10%(榧油を分析)含まれているのが特徴です。
榧の実の収穫
榧の実は2年間たっぷりと太陽の恵みを浴びて育ちます。大きくなった実を収穫していると、来年に向けて育つ実の赤ちゃんが見られます。収穫期は9月初旬~10月で、自然に落下したものを拾い集めます。落下した実は時間とともに鮮度が落ちるため、私たちは毎朝山に通い、できるだけきれいな状態で持ち帰れるようにしています。持ち帰った榧の実は一つひとつ手で剝き、緑色の果肉と種子に分けて保存します。
榧の実の歴史
古くは縄文時代より食べられていたとの記録が残されています。榧が日本各地に広がったのは弘法大師によるもので、平安時代、実は凶作に備える保存食料に、また実から搾った油は生計の糧とするようにと伝え広められたそうです。四国八十八ヶ所霊場第六十七番札所、香川県の大興寺の参道脇にある榧は大師お手植えと伝えられており、樹齢は1200年にもなります。
榧の実の使いみち
榧の実の種子は炒って食べるほか、飴や砂糖掛けのお菓子、お腹の虫くだしや漢方などに使われています。また、種子から搾った油は食用のほか、燈火用、理髪用などに用いられていました。榧油は明治時代の「大日本有用樹木効用編」や大正時代の「大植物図鑑」には「本邦植物質ノ油中最上ノ者ナリ」と記されており、かつては「日本最高級の植物油」として高く評価されていたようです。
緑色の果肉は爽やかな柑橘系の香りがし、焼酎の香りづけや最近ではクラフトビールにも使われています。また、当店では世界で初めて榧の果肉の香りを製品化し、精油や香水を作りました。
榧の実の食べ方
- 果肉を取り除いた殻付きの種子を1週間ほど灰汁に浸けてアク抜きをします
- 取り出した種子をよく洗い、3日ほど陰干しをして乾燥させます
- 殻ごと弱火でゆっくりと炒ります。炒り具合はお好みで
- 殻をむいて薄皮をはぐ、または薄皮ごと食べることもできます